法学 世界が国際法に期待すること

 世界が国際法に期待すること
 平成20年8月15日作成
1 国際法と国際社会
 国際社会は、それぞれ主権を持つ国家によって構成される。この諸国家は相互に依存し緊密に関係し合って来たのであり、現代においては一段と重要さ、複雑さが増している。このような国際社会において、国家間の種々の関係を規律する法が国際法と位置づけられる。
 国際法はインターナショナル・ローといわれるように、国家間の権利義務を定めることを基本とした法であることから、国際法上の主体は国家となる。しかし、最近では、国際社会の発展に伴って、国際連合のような国際組織や、時には個人(例えば戦争犯罪人やジェノサイド=集団殺戮における戦争責任の処罰、ヨーロッパ人権条約にみる個人の請願権など)も一定の範囲において、国際法上の主体となることもあるなど、国家と国家組織、及び国家と個人などの関係を規律する側面を有するようになった。



《 国連は時として各国のパフォーマンスの場になってしまいます 》

2 国際法の法的性質 
(1)国際法の内容
 国際法の法的性質を論ずるに当たり、国際法の定義が必要となる。学者の見解は必ずしも一致しておらず、ほぼ3つに大別される。

(第1説)  国際法は国家間の関係を規律する法規であるとする。グロチウスやカルブォの主張する説で、古くからの見解で通説である。しかしながら、国家間の法規と限定するのは現在の事実と相違する。国家間の情報交換が活発になるにつれ、人権など国の中の人に対する国際法の重要性が増している。
(第2説)  シュルトップの定義にあるように、国際法の主体となり得る国家やその他を規律する総体であるとする説。折衷的であるが、国家の権利義務だけでなく、戦争(内戦・民族紛争を含む)を通して、人権の国際的保障が叫ばれ、国民が主体となる国際法も必要とされる。
(第3説) 国内法は、同一の政治団体に属する個人間の関係を規律するのに対して、国際法は異なった政治団体に属する個人間の関係を規律するとする。新しい学説である。
 国家間の規律は国民が権利義務を行使するのであり、究極的に国際法の従属者は個人であると考える。
 しかし、現在の国際社会を見ると、国家は独立して権利義務を持っており、国家を単位として活動している事実は軽視できない。                  
 ゆえに、第2説の国際法の主体となりうる国家およびその他の権利義務を規律する法規と解するのが妥当である。
 国際法の法源としては、通説は、条約と国際慣習の二つに求め、法の一般原則をこれに加える場合もある。国際組織の決定は条約の1種であり、国際裁判の判決は法源とはみなされない。 
                                      
(2)国際法と国内法の比較
 国際法と国内法(一般法)を法的性質で比較すると、規範力や法体系の点で次の①~④ような相違が見られる。
① 立法の過程
 国内法は国の統一的立法機関によって制定され、慣習法も国家から承認されたものである。ところが、国際社会には国家の議会のような立法機関がない。国際連合は主権国家を前提とした協力機関であり、超国家的な立法機関ではない。国際法は国家間の合意に基づいて成立するものであるので、あらゆる問題について国内法のように整備された形で規定を設け、すべての国家の同意を得ることは困難である。
② 法の強制力
 国内法では法の侵害に対する制裁として、警察・軍隊・刑務所などの物理的強制が加えられる。しかし、国際法の場合は、強制する力や組織がない。たとえ国際法に違反した国があっても、これに物理的強制を加えることは困難である。国際連合も集団的制裁をある程度組織化するようになったが、この場合でも各国が持つ武力集結によって行う制裁であって、超国家的な国際法機関そのものが持つ公権力の行使とは性質が異なる。そのため、国際連合による制裁は、組織化や実効性の点で困難な点が多い。
③ 適用の範囲の限界                            
  国際法にはさらに適用の限界がある。国内法は法の適用のための機関として裁判所があるが、国際社会にはそれに相当する機関がない。現在、国際司法裁判所があるが、それは国内裁判所のような強制的管轄権を持たず、当事国の合意がなければ裁判をすることができない。国際紛争が起きても、直ちに国際裁判を受け入れる義務はない。国際法においては、当事国の主観的解釈を認める場合がなく、国際慣習で自力救済(報復)を認めてきたことなどは、法の適用とその実現を困難にしている。
④ 法としての体系化
 以上のほか、国際法は国際社会が十分に組織されていないため、国内法のように体系化されていない。無数の非統一的な条約として存在し、内容規定の不正確な国際慣習などから構成される。そこで、国際法は非統一的な国際社会の非組織的な法ともいわれる。
 さらに、国家主権の尊重が重視されるあまり、反国際社会的行為という概念が未発達であり、国際責任の多くが民事的性格にとどまっていることなどは、国際法が国内法と比較して未成熟の法と呼ばれるゆえんである。
 このように国際法は国内法と異なり、国家間の明示または黙示の承認によって発生し、強制力も弱く、その違反を判定する機関も不完全である。この点から、国際法を法として否定する説もあるが、国際社会の組織的な社会力によって強制される限り国際法もまた法である。
国際連盟から国際連合と進んだ現在、国際法の強制力も次第に高まり、世界平和と国際社会の秩序を維持するため、一層その機能の強化が望まれている。

(3)国際法の法的性質の変化
 このように国際法には多くの限界があるが、国際関係が緊密化するに伴い、その規制する範囲や内容が拡大してきた。特に、戦争や労働を契機とする人権保障の問題では、今後、次の①~④の理由から、国際法への期待は大きい。
① 戦争の違法化
 第一次世界大戦までは、国際紛争を解決する手段としての戦争は、一般に認められていたが、国際連盟規約では戦争の合法的範囲を限定した。1928年の不戦条約では、紛争解決の手段として武力行使を禁止し、さらに国連憲章は平和手段において紛争を解決すべきことを規定するようになった。
② 国際法の対象の拡大
 国際連合はILO条約によって労働条件を一般化し、国際的に規制するようになった。人権・文化・経済その他の分野においても国際団体の合意による国際法の定立が進み、国内事項と思われるものが、次第に国際法的に規制されるようになった。
③ 国際法上の拘束力の変化
 国際連合その他の機関において、必ずしも全回一致によらなくても多数決で決定したことや、その機関の理事会で決定したことから、全加盟国を拘束するようになった。例えば、WHOの規則、安全保障理事会の決定などがその例に挙げられる。
④ 国際法上の制裁がある程度組織化されたこと
 個別的な自力救済も基本的には克服されていないが、国際連合のもとでは、ある程度組織化された集団的な制裁がとられるようになった。これは国際法の実効性にかかわる注目すべき方向である。

<評価 60クラス>
 国際法は成立過程や強制力などに、さまざまな課題を持ちながらも、国際社会がその必要性を認識しつつある。情報化社会が進む中、国際的に平和や経済、人権が今後、ますます重要になり、一層その機能強化が期待されるといえます。

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