法学  刑事政策における罰金刑のあり方について

 刑事政策における罰金刑のあり方について
1 多用される罰金刑
 犯罪者に対する刑罰にはいくつか分類の方法があるが、奪う法益から類型化すると、生命刑・身体刑・自由刑・名誉刑・財産刑などに分類されます。日本の現行法は生命刑として死刑、自由刑として懲役・禁錮・拘留、財産刑として罰金・科料・没収の7種の刑罰を設けています。
 罰金刑は財産刑であり、犯罪者から財産的利益を奪う刑罰です。罰金刑は自由刑より歴史が古く、古代ローマ法において国家が贖罪金の支払いを強制するようになり、罰金として国家に帰属させ、その一部を被害者に支払う制度が生まれました。中世では軽微な犯罪に対する刑として、公共団体の平和金となる罰金が制度化されていたが、20世紀になって短期自由刑の弊害が問題となり、その回避策として罰金への代替えが唱えられた。その後、罰金刑適用の拡大化が進み、日本においても罰金刑が多用されました。



〈 懲役刑は強制的に労働を課す刑罰だが働かされると知らない若者が一部にいます 〉

2 罰金刑の代替性
 日本の現行刑法は、平成3年の「罰金の額等の引き上げのための刑法等の一部を改正する法律」の制定によって、原則的に刑法等に定める罰金及び科料の額等を2.5倍に改めました。これによって、ひとまず経済変動に伴う罰金額の不釣り合い感を解消したのです。罰金の執行は検察官の命令によるが、この命令は執行力のある債務名義と同等の効力を持ちます。罰金を科する場合としては、罰金のみ他の刑と併科、他の刑と選択的に科する場合があります。罰金を言い渡す場合には、「被告人を罰金10万円に処する。ただし、右罰金を完納することができないときは、金10万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する」という形式で行う。つまり、罰金が完納できない者は労役場に留置されることになります。
 また、罰金刑は日本の刑罰の中で、もっとも多用されていて、平成17年度の全事件裁判確定人員781,896人中、罰金は689,472人であり、科料は2,829人です。罰金は実に88.2%に達しており、そのほとんどが通常の手続きではなく、略式手続きによるものです。このように、現在では、罰金刑こそ刑罰の中心をなすものと言えます。

3 罰金刑の抑止的効果
 罰金刑は金銭を奪うという苦痛を手段として、刑罰の予防を図るものですが、他の刑罰と比べての長所は自由刑の弊害を回避して、犯罪者を社会においたまま、犯罪抑制効果を生じさせる点です。さらに、その執行に多くの費用を必要とせず、社会的・経済的コストが低い点にあります。
 しかし、他の刑罰と比較して、一般に苦痛の程度が軽く、損得計算の下で行われる犯罪や規範意識のない犯罪者には無力です。罰金刑の限界がここにあります。罰金が刑罰として機能を果たし得る犯罪及び犯罪者の見極めが必要です。利欲的動機に基づく犯罪や、法人に対する刑罰として意味があるというのもこの視点からです。

4 罰金刑の補完  
 罰金刑には長所ばかりでなく、短所があります。その短所とは、①無資力者に対する執行は不可能かあるいは困難です。②受刑者の財産・収入状態によって、刑罰効果に不平等が生じます。罰金が完納できない場合は労役場留置という換刑処分に付されるため、富む者は金銭で、貧しき者は自由刑で償うことにことになりがちです。
 罰金刑の上記のような短所を補うためにいくつか制度があります。代表的なものに罰金の執行猶予、延期・分納、そして日数罰金制度があります。罰金の執行猶予はわが国で認められており、50万円以下の罰金について適用されます。その執行猶予は1%前後であり、他の刑罰の執行猶予と比べ低い。わが国の罰金の宣告刑は一般に低額であること、また罰金の受刑者に社会的非難がほとんど加えられないことから、執行猶予を多用したのでは、罰金刑の効果が期待できません。したがって、猶予の適用は特別な事情がある時に限定されるでしょう。
 罰金の延納・分納制度は罰金完全不能の事態を回避し、労役場留置への換刑を避けるために、一定期間罰金の支払いを延期するか罰金を分割払いとする制度です。ドイツなどでは設けられていますが、日本には設けられていません。

5 財産に応じた日数罰金制度の導入
 日数罰金制度は行為者の財産状態を考慮して、1日分を金額に換金し罰金を日数によって科するものです。この制度はスウェーデン、旧西ドイツ、フランスなど先進国に導入されたが、日本では採用されていません。この制度の特長は、刑罰効果の平等化と無用かつ有害な換刑の防止などです。問題点は被告人の財産・収入状態をどう確定するかです。民事判決では被告人の財産・収入に応じた損害賠償請求がなされており、日本でも民事判決に倣い被告人の財産・収入が確定されれば、日数罰金制度の導入が検討される時期です。

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