法学 契約における有償性と無償性の反映

 契約における有償性と無償性の反映
1 緒言
 契約の有償性とは、契約の当事者が互いに対価的意義を有する経済的損失を負担するか否かをいう。
 例えば、売買契約では土地の買い主に代金支払義務が生じ、売り主には建物明け渡し義務、登記移転義務が生じる。これらは互いに相手の債務負担を前提にしており、有償契約といえる。
 一方、贈与契約では契約の一方の当事者のみが経済的負担をしており、無償契約といえる。
売買契約(555条)のほか、賃貸借(601条)・請負(632条)等が有償契約に属し、贈与(549条)・使用貸借(593条)等が有償契約に属する。委任(643条)・消費貸借(587条)などは利息または報酬を支払うか否かによって、有償契約とも無償契約ともなる。
 両者の区別の実益は、有償契約にはすべて売買の規定(559条参照)が準用されることであり、重要な売り主の担保責任に関する規定を始め、いくつかの重要事項を以下に述べる。



《 建築に瑕疵はつきもの 隠れた瑕疵の担保責任は一般に10年です 》

2 担保責任
2.1 売買契約における売り主の担保責任
 AさんとBさんとの間の土地付き建物の売買契約が無事履行され、明け渡し、所有権移転登記も修了し、代金も支払われたとする。普通はここで売買は終了である。
 ところが、Aさんが購入した建物に何らかのキズ(瑕疵)があった場合、買い主のAさんにしてみれば、売り主のBさんに責任をとってもらおうとするのは当然である。
そもそも、売買契約は当事者である売り主と買い主が対価的な経済損失を負担する契約である。このような有償契約においては当事者間の扱いは公平でなければならず、対価をもらって売っておきながら、瑕疵に対して知らぬ顔をしては公平とはいえない。
 そこで、民法は売り主に一定の責任を課している(561条~572条。562条を除く)。
 この担保責任の内容として、その瑕疵の大きさや質により契約を解除することが認められている。

(1) 権利に瑕疵があった場合の担保責任
上記の土地付き建物売買の例で言えば、AさんがBさんから購入した土地付き建物売買が実はBさん所有のものではなく、まったく他人のCさんのものであった場合である。どうなるのであろうか。
 この場合、BさんがCさん所有の土地・建物について、Aさんと売買契約を結ぶことは何ら差し支えない。契約は結局、人と人との契約なのであるから、今のところはCさん所有になっている土地・建物を、BさんがCさんから譲り受けるなどして、Aさんへ売るという約束をすることは可能である。560条はそれを前提とし「他人の権利を以て売買の目的と為したるときは売主は其権利を取得して之を買主に移転する義務を負う」と規定している。
 しかし、Cさんにすれば、AさんとBさんが何を約束しようと土地・建物の所有は自由であり、所有権を手放すのがいやだといえば、BさんはAさんにその所有権を譲渡できないことになる。Aさんが仮にAさん名義の登記をしても、本当の所有者であるCさんから登記の抹消請求をされたら、応じる義務がある。そして、AさんはBさんとの売買契約を解除することができる。 なお、Aさんは解除した場合には損害賠償をも請求することができるが(545条3)、契約時に悪意であった場合には、その危険は覚悟すべきであるから、解除はできるが損害賠償を請求することは許されない(561条但し書き)。

(2) 物に瑕疵があった場合の担保責任
 AさんがBさんから建物の明け渡しを受けて住んでいたところ、大きな柱に明け渡しの前から白蟻が巣食っており、かなり傷んでいることがわかった。それは契約時にはAさんはもちろん、専門家でもわからないものであった。
どうなるであろうか。
この場合、「売買の隠れたる瑕疵」があったものとして、瑕疵のために契約の目的を達し得ない時、つまり柱が浸食され家が危険な状態ならば、Aさんは契約を解除することができ、その他の場合は損害賠償を請求することができる(570条、566条1)。このような売り主の責任を瑕疵担保責任という。
この瑕疵担保責任の法的性質についてはいろいろと争いがあるが、この例の建物のような特定物の場合は570条が適用されると解されている。
瑕疵担保責任の追及には時間的な制限があり、契約の解除または損害賠償の請求は、瑕疵ある事実を知った時から1年以内にしなければならないとされている(570条3)。この場合の売り主の責任は、一般の債務不履行と異なって、買い主保護のための無過失責任と解されており、他方において、売り主の責任に短期の時間的制限をおいて、売買関係の迅速な処理及び売り主・買い主間の公平・均衡を図っているのである。

2・2 贈与契約における贈与者の担保責任
 贈与とは、ある人(贈与者)が相手方(受贈者)に無償で財産権を与える無償・諾成・片務・不要式の契約である。 
仮に贈与の目的物に権利の瑕疵または欠缼(けんけつ:欠けていること )があったとしても、原則として担保責任は負わない(551条)。無償契約では個人的なつながり等でタダで財産物をもらう訳であるから、文句はいえないと解されるからである。
ただ、贈与者が瑕疵等を知っていて受贈者に告げなかった場合には、担保責任を負う(同条但し書き)。
 また、受贈者に一定の債務を負担させる負担付き贈与契約では、贈与者は受贈者に対して、負担を履行すべき旨を請求する権利を有し、贈与者は負担の限度において売り主と同様の担保責任を負う(551条2)。受贈者の負う負担と贈与者の給付は対価関係にあるわけではないが(すなわち無償契約であることに変わりはない)、実質的には、負担の限度で両者が対価関係にあるところから有償・双務契約に関する規定が適用される。

3 賃貸借と使用貸借にみる有償性の相違
 賃貸借とは「当事者の一方が相手方に或物の使用及び収益を為さしむることを約し相手方が之に其賃金を払うことを約するに因りて其効力を生ずる」(601条)契約をいう。 
使用貸借とは「当事者の一方が約し相手方が之に其賃金を払うことを約するに因りて其効力を生ずる}(601条)契約をいう。
使用貸借とは「当事者の一方が無償にて使用及び収益を為したる後返還を為すことを約して相手方より或物を受け取るに因りて其効力を生ずる」(593条)契約をいう。
 いずれも、貸し主・借り主の債権関係を本質とする契約であるが、賃貸借が有償であるのに対し使用貸借が無償であり、この有償性の違いが両者の差異に明確に反映されている。

3.1 貸し主の義務
(1) 目的物の引き渡し義務
 賃貸借は引き渡し義務を負うが、使用貸借は要物契約であり目的物を引き渡して初めて契約が成立するため引き渡し義務は負わない。

(2)修繕義務
 賃貸借は606条により負う。使用貸借は消極的な修繕の義務のみを負う。(3)費用償還義務
 賃貸借は606条により負う。使用貸借は通常の保存等の必要は負わない。(4)担保責任
 前述のとおり、賃貸借には売り主の規定が準用され、使用貸借は贈与者の規定が準用される。

3.2 借り主の第三者に対する関係
 不動産の賃貸借は、これを登記すれば新所有者に対抗できる(605条)。使用貸借は目的物の新所有者に対して借り主の地位を主張し得ない。  

3.3 契約終了の原因
(1)存続期間・返還時期との関係
 617条によれば、賃貸借は存続期間を定めなかった場合は、各当事者はいつでも解約を申し入れることができるが、その場合一定の猶予期間を経て終了する。存続期間の定めのある場合は使用貸借の規定が準用される。
 使用貸借は返還時期を定めなかった場合は、契約に定めた目的に従った使用収益を終えた時終了する(597条2)。契約に定めた目的に従った使用収益が終了しない時でも、使用収益をなすに足るべき期間がくれば、貸し主は返還を請求できる(同条但し書き)。返還時期も目的を定めなかった時は、貸し主はいつでも返還請求ができる(同条3)。

(2)借り主が死亡した時
 賃貸借においては賃貸人の地位が承継され、相続される。使用貸借では借り主の死亡はそのまま契約の終了原因となり、借り主の地位は相続されない(599条)。

有償性は売買と賃貸借に、そして無償性は贈与と使用貸借の規定に明確に現れる。

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