法学 民法の担保物権の種類とその根拠

民法の担保物権の種類とその根拠

1 緒言
 民法典は留置権・先取特権という法定担保物権と質権・抵当権という約定(やくじょう)担保物権の4種類を定めている。法定担保物権は、一定の要件の下に法律に基づいて発生するものをいい、法律が特に保護すべき債権に担保物権を付与している場合である。これに対し、約定担保物権は当事者の契約に基づいて発生するものをいい、金融取引を媒介する重要な機能を営むものである。


〈 民法学のバイブル 我妻先生は学生の頃化学が好きだったそうです 09.4.2撮影 〉

2 抵当権
 抵当権は、債務者または第三者(物上保証人)が債権の担保として提供した目的物をそのまま提供者である設定者の利用に委ねながら、その目的物の交換価値を把握し、債務の弁済のない場合には、その目的物の交換価値から他の債権者に優先して弁済を受けることのできる担保物権である。
 性質を以下に記す。
(1) 目的物の占有を設定者にとどめる非占有担保物権である。この点で後述する質権と異なる。
(2) 被担保債権について優先弁済的効力を有する。
(3) 目的物の価値を直接支配しうる物権であるから、物権の有する一般的効力を有し、物権的請求権・追求力も有する。
(4) 被担保債権に附従する性質(附従性)を有している。
(5) 随伴性を有し、その帰属主体が変動(債権譲渡)すると同時に移転する。
(6) 不可分性・物上代位性を有する。

3 質権
質権は、債権者がその債権の担保として債務者または第三者(物上保証人)から受け取って物を債務のあるまで留置して債務の弁済を間接的に強制するとともに債務の弁済のない場合には、目的物の交換価値から他の債権者に優先して弁済を受けることができる担保物権である。
留置的作用と優先弁済的作用という2つの作用によって、担保的機能を実現する点が抵当権との大きな違いである。
(1) 抵当権が諾成契約であるのに対し、質権は要物契約である。
(2) 第三者への対抗要件は、不動産については抵当権と同様に登記であるが、動産は物の占有継続である。
(3) 不動産質については、存続期間が10年と定められている。
(4) 果実に対する効力は、抵当権は原則及ばないが、質権は動産・不動産とも及ぶ。
(5) 使用収益権能は抵当権・動産質はないが、不動産質はある。

4 留置権
留置権は他人の物の占有者(たとえば自動車の修理人)が、その物に関して生じた債権(たとえば修理代金請求権)を有する場合に、公平の見地から、その債権の完済を受けるまで、その物を留置し引き渡しを拒むことによって、債務者の弁済を間接的に強制することのできる担保物権である。
 以下に性質を述べる。
(1) 附従性・随伴性・不可分性がある。
(2) 留置効力に本体があり、目的物の価値を支配する権利から、物上代位性はない。
(3) 目的物から優先弁済を受ける権利も有しない。ただし、競売権が認められており(民執195条)、事実上は優先弁済を受け得る。
したがって、留置権は単に占有をしうるだけの権利で価値を支配しているとまでは言いにくい面がある。

5 先取特権
 先取特権は、法律の定めた特殊の債権(たとえば雇い人の給料債権)を有する者が、社会政策的見地、公平の見地、当事者意思の推測等を根拠として、債務者の一定財産から他の債務者に優先して弁済を受けることのできる担保物権である。
 主なものは、
(1) 一般先取特権 共益の費用、雇い人の給与、葬式の費用
(2) 動産先取特権 不動産の質料等、旅館宿泊料・飲食料
(3) 不動産先取特権 不動産の保存の費用
である。
 性質として、以下の事項が挙げられる。
(1) 中心的効力は、優先弁済的効力である。
(2) 物上代位性はあるが、一般先取特権においては特定の目的物上にではなく、総財産の上に成立するため、物上代位性は問題とならない。
(3) 留置的効力はない。
(4) 附従性・随伴性・不可分性がある。
 したがって、先取特権は実は優先債権とも見ることができる。

6 結語
 物権の本質は、物に対する直接の支配権である。したがって、占有(留置的効力)を要件とすると、留置権・質権にはこの物権性が認められるが、抵当権・先取特権にはないことになる。後者の2つには担保物の競売申請権があるに過ぎない。
 さらに、優先弁済権のみに物権性を見いだしても、留置権にはこの性質が民法上ないので疑問が残る。さらに、追及権を根拠と考えても、質権・抵当権にはあるが、留置権は留置物の占有を喪失することで消滅し(302条)、動産先取特権にも追及権はない(333条)ので、物権性の決定にはならない。
 ここで、物権と債権の区別を考える。債権は特定人を介し特定行為を請求する権利であるが、物権は物に対する直接の支配、つまり担保物権で言うなら、担保権者が担保物から直接に価値を取得することを目的にする権利と言える。  
ただ、担保物権の場合、他の物権(所有権や地上権)が物の使用価値の取得を主たる内容とするのに対し、担保物権の売却による交換価値の取得を目的とする内容(優先的弁済権および留置権における競売権)と言える。
 したがって、担保物権は他の物権と同じく目的物の上に成立し、目的物全体を支配するけれども、使用価値ではなく物の交換価値の支配を目的とする点から、他の物権とは異なる性質を持つとも言える。

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