法学 民事訴訟における既判力の効果

法学 民事訴訟における既判力の効果
1 適切な判決
  裁判は、当事者双方の懸命な努力と裁判官の慎重かつ公正な判断とにより、適正な内容で判決されることを目標とする。しかし、適正さを追求するあまり、一度なされた判決が容易に覆っては、判決に至までの関係者のエネルギーが無になってしまう。
 そこで、訴訟制度は判決の変更や上訴など適正さの維持修正の道筋を確保しながらも、一度示した判決には種々の効力を与え厳正さを担保している。



《 民事訴訟は双方が合意したことは争えないです 》

2 既判力は法的安定性を目指す
  判決の最も典型的な効力に既判力がある。確定した終局判決における請求の判断は、その後、当事者間を規律する規準となり、当事者は後訴では同一事項を争えなくなるし、裁判所もこれに反する判断はできない。この確定判決の後訴における通用力ないし基準性を既判力または実質的確定力という。 
  既判力は判決内容の正当性確保の道筋を前提としながら、国民全体のために法的安定性の実現を目指す。民事訴訟法制度に不可欠な効力といえる。

3 既判力の標準時
既判力は確定した終局判決に効力を生ずる。また、確定判決と同一の効力を持つ裁判や調書にも効力を生ずる。しかし、訴訟指揮をめぐる決定・命令には既判力は生じない。 既判力の作用する範囲は、判決主文中の判断である(民訴199条1項)。確定判決の内容となる私法上の権利関係は、一旦、判決でその存否が確定されても、訴訟中にも時々刻々と権利関係が発生・変更・消滅するため、既判力の作用すべき判断がどの時点かを確定する必要がある。ここで、当事者は事実審(1審・2審)の最終の口頭弁論終結の時点までは権利・法律関係の存否をめぐり事実資料を出すことができ、裁判所も出された資料に基づいて判決できることから、この時点を既判力の標準時(基準時)という。
したがって、この時点の権利・法律関係の存否の判断が主文に記載され、それについて既判力が生じ、標準時以前または以後の権利・法律関係については、たとえ判断されても既判力は生じない。事実審の最終の口頭弁論終結時に既判力を認めるのは、この時点までは事実問題の攻撃防御の展開ができ手続き的保障を満たすとともに、できるだけ最新の権利・法律関係について既判力を生じさせるという実質的安定性を考慮するものといえる。

4 既判力の遮断効
  標準時前にすでに存在していた事実については前訴で訴えたのであり、その法的地位にあったものは、後訴でこれらの事由に基づく主張を争うことはできない。また、後訴裁判所はこれらの事由に基づく請求があった場合は排除しなければならない。このような既判力の作用を遮断効という。
 しかしながら、形成権の遮断効については、見解の対立がある。形成権のうち、相殺権に遮断効がないことには、ほぼ異論はない。取消権・解除権等には諸説が提示されている。

5 取消権の遮断効
  取消権について、通説は標準時前に発生した取消権は前訴で行使して結果を主張し得たのであり、前訴の法律行為の瑕疵を問うから前訴で争うべきとする。また、より重大な瑕疵による無効事由が遮断されることから考え、遮断効が及ぶとする。最高裁も売買契約による所有権移転を請求原因とする確認訴訟の判例(昭和55.10.23)で述べている。
  通説が取消権の発生時点に着目し遮断効が及ぶとするのに対し、反対説は取消権行使の効果発生の時点に着目し、既判力は標準時における請求権の存在を確定するだけで、将来の取消権行使により消滅する可能性がないことまで確定するものではないとし遮断効が及ばないとした。また、無効と取消との差は特定人の保護を念頭に置くのが妥当か否かの問題で、瑕疵の軽重によるものではないとする。
上記の2説に反対する第3説がある。この説は、標準時との関係で通説が取消権発生の前後、反対説が取消権効果発生の前後で議論するのに対し、問題の実質に即して取消権者の法的地位で、前訴で提出すべき責任があるかを判断して遮断効の有無を判断すべきとする。
この説によれば、取消事例では取消権者は除斥期間内ならいつでも取消得る法的地位にあることから標準時後の行使結果につき手続き保障が要求され、前訴での提出責任は認められず遮断効は否定される。
  しかし、取消権は前訴で争われた法律行使自体の瑕疵に関するから、前訴で行使した場合の法的安定性が要求され、遮断効を認める要求も残る。
  そこで両者を調和し、たとえ除斥期間内に行使された場合でも、前訴で行使しなかったことに正当性が認められない場合には、遮断効を認めるべきであるとする。第3説が実質的にはよいが、行使の正当性の判定がむずかしく、法的安定性を考えると通説には及ばないと考えられる。

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