考察 環境保全条例の制限 法の想定を超えて自由にはできない

 環境保全条例の制限 法の想定を超えて自由にはできない
 環境保全条例と法律の関係
 環境あるいは公害に関する条例は、現在すべての都道府県で制定済みであり、さらに市町村においてもこれを制定するものが少なくありません。加えて、その内容は、かつてのような国の法令上の未規制公害のみを対象とする補足的な定めをおくにとどまるのではなく、地域的特性に応じて多様な手段で総合的な規制を定めるものが多く、結果的には、法令の規制を上回るきびしい内容を含むのが通例となっています。
  しかし、果たして条例で法律の規制を大幅に上回るような規制措置を定めることまで、現行法は予想しているのでしょうか。この点は、やはり法的には重要な問題です。そこで、ここでは、まず、条例との関係について述べた法律の規定を洗い出し、法律上の問題点を整理します。


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《 水質汚濁は特に地域性のある分野であって自治体の条例が必要 》

1 大気汚染防止法と水質汚濁防止法
 大気汚染防止法と水質汚濁防止法には、条例との関係において次の2種の規定がおかれています。
(1) その1つは、いわゆる上乗せ基準の設定を条例に許容した規定です。すなわち、大気汚染防止法4条及び水質汚濁防止法3条3項によると、「都道府県は、当該都道府県の区域のうち……その自然的、社会的条件から判断して(国の)排出(水)基準によっては人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが十分でないと認められる区域があるときは……条例で(国の)排出(水)基準にかえて適用すべき許容限度よりきびしい許容限度を定める排出(水)基準を定めることができる」とされています。地方公共団体が法令上の規制値を上回るきびしい数値を条例で定め、法令上の基準にかえて適用することを法の明文をもって許容したものです。
  しかし、これによって上乗せ条例の可否をめぐる問題が、すべて解消されたわけではありません。第1に、本条項によって上乗せ条例の制定が許容されるのは、都道府県のみであり、市町村が条例で上乗せ基準を設定できるかについては触れられていません。
第2に、大気汚染防止法が都道府県条例によって上乗せ基準の設定を許しているのは、ばいじん並びに有害物質についてであって、硫黄酸化物は除外されています。おそらく、その理由は、硫黄酸化物についてきびしい規制をするには、低硫黄原油の確保を図るなど国のエネルギー政策と密接に関連するため、地方公共団体が独自の判断で硫黄酸化物の規制を強化することは、国のエネルギー政策との整合性よりみて適当でないと判断したものでしょう。
第3に、本条項による上乗せ基準の設定は、都道府県の区域のうち一定の区域に限って認められるのであって、都道府県の全域にわたって右条項が上乗せ規制を許容しているかどうかは疑問が残ります。さらに第4に、この条項によって許容されている上乗せ基準とは、法令上の規制数値のかさ上げであり(そのほか上乗せ条例においては、スソ切り水準の切下げによって対象施設の拡大が図られることがある)、条例が法令上とられている規制方法と異なる方法によって規制を実質的に強化することを認めるものではないと解釈されます。
このように見てくると、現在、地方公共団体が実施している硫黄酸化物の量規制その他装置規制等の横出し規制などは、これらの上乗せ許容条項の予定するところではないと見るほかないことになります。

(2) したがって、現在多くの地方公共団体が実施している大気や水質関係の規制に関する独自の規制方式の当否は大気汚染防止法32条、水質汚濁防止法29条の規定に照らして判断さるべきこととなりますが、これらの条項により明示的に条例で規制することが許されているのは、①法令上の規制対象施設から発生する規制対象物質以外の物質、②規制対象施設以外の施設から排出する汚染物質に関する規制にかぎられています。つまり未規制公害の規制のみが予想されているに過ぎないのであって、法令上の規制対象施設から排出される法令上の規制対象物質について、重ねて条例で上乗せないし横出し規制することができるとは、少なくとも法文上には明示されていないことに留意する必要があるでしょう。

2 騒音規制法・振動規制法・悪臭防止法
(1) 騒音、悪臭及び振動は、大気汚染や水質汚濁のような広域公害ではなく、たいていは地域的局地的な公害にとどまるから、法律による規制区域は都道府県知事の指定する地域にかぎられ(指定地域制)、規制基準も都道府県知事が環境大臣の定める範囲内において定めるものとされています。ただし、騒音、振動については、局所的局所公害から住民の生活環境を保全するために市町村が先の基準値では十分でないと認めるときは、条例で、指定地域の全部または一部について法令上の基準に代えて適用すべき規制基準を定めることができるものとされています(騒音4条2項、振動4条2項)。
しかし、この市町村条例による上乗せは、無制限ではなく、環境大臣の定める範囲内で許されるにすぎず、現実には「特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準」(昭43年)によって上乗せの余地はきわめて狭く限定されていることに留意が必要です。

(2) 騒音規制法、振動規制法は、もとより一般原則に従い、地方公共団体が、条例で法令上の未規制公害につき規制を定めることは当然これを承認しています(騒音第27条第2項、振動第24条第2項)。具体的にいえば、指定地域外における騒音、振動の規制、および指定地域内における特定工場や特定建設工事以外から生ずる騒音・振動の規制が、条例による規制の対象とされるということです。
  しかし、このほかに、注目されるのは、騒音・振動については「地方公共団体は、指定地域内の特定工場等につき当該地域の自然的、社会的条件に応じ、この法律とは別の見地から、条例で必要な規制を定めることを防げるものではない」(騒音27条1項、振動24条1項)との規定がおかれていることです。
そこで、一部には、ここにいう「この法律とは別の見地から(の規制)」の意義をきわめて広く解し、条例が法律とは異なる規制方法ないし規制技法を採用する場合には、「法律とは別の見地からの規制」にあたると解して、横乗せ的規制を広く許容する趣旨と理解する見解もありえそうに見えます。 しかし、本条項が「別の見地から」といっているのは、たとえば、騒音についていえば、音の大きさについて規制するのではなく、高周波による不快音を規制するとか、特定の不快な音質を規制するといったように、法令とは規制の目的を異にする規制を指すのであって、同一目的の規制であっても規制の方式ないし技法をかえさえすれば「別の見地」からの規制として許容されると解してよいかには疑問があります。少なくともこうした解釈は立法の趣旨に忠実な解釈とはいい難いのではないでしょうか(同旨、金沢監修『註釈公害法大系第3巻』348頁)。

(3) つぎに、悪臭防止法は「地方公共団体が、この法律に規定するもののほか、悪臭原因物の排出に関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない」(第24条)と規定しています。前記二法とはやや条文の体裁を異にするが、その意味するところはほぼ同様であって、①規制地域以外の地域における悪臭の規制と、②規制地域における悪臭物質以外の物質の規制のみを条例による規制対象事項としているものと解すべきでしょう。条例による上乗せ規制の可否については、特に言及されていませんが、法自体(第4条)が規制地域をその自然的社会条件に応じて区分し、悪臭物質ごとにキメ細かく規制基準を定めることとしているところより判断して、悪臭防止法は条例による上乗せは予想してないものと解するのが自然でしょう。

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