法学 都道府県と市町村のすみ分け

  都道府県と市町村のすみ分け
 都道府県と市町村の対等の関係
1 市町村は住民にもっとも身近な基礎的地方公共団体であり、住民の日常的な行政需要を満たすための公共役務を提供する役割があります(地方自治法第2条第3項)。他方、都道府県は市町村を包括する広域的な地方公共団体で、市町村の連絡調整、広域行政その他市町村が処理することが不適当な事務をつかさどります(第2条第5項)。

 都道府県と市町村の関係は、ときに前者を上級団体、後者を下級団体ということもありますが、その呼び方は必ずしも適切ではありません。両者は、法律上は基本的に同格の団体であり、上下の関係に立つものではないからです。



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2 もっとも、都道府県は市町村を包括する団体ですから、都道府県内の行政の統一ないし不調和是正のために、法律によって市町村に対し優越性が付与される場合があります。たとえば、「市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない」(2条16項)。右の規定に違反する市町村の行為は、無効である(同17項)とされています。

3 しかし、都道府県と市町村は基本的には対等な地方公共団体ですから、法律にこうした特別の規定がない以上は、それぞれが独自の責任と判断で行政を営み、住民福祉に貢献すべき立場にあります。市町村はけっして都道府県の従属団体ではありません。都道府県と市町村はそれぞれ法令によって割りあてられた事務を自主的に実施していく責務を負っている(同法2条4項、5項)けれども、法令より義務づけられた事務以外の事務については、それぞれの判断で自主的に採択を決定することができます。もちろん、その場合に、都道府県と市町村が同一の事務・事業を採択して二重行政、二重サービスとなるのは適当でないので、自治法は「都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当っては、相互に競合しないようにしなければならない」(2条6項)との規定をおいています。

事務の市町村優先の原則
4 ところで、都道府県と市町村が対等の団体であり、それぞれ自立的に行政を営むべきものとすると、都道府県と市町村の事務配分がいかなる原理原則によるべきかが、むずかしい問題となります。しかし、おそらく、ごく原則的にいえば、住民の日常生活にかかる行政は、できるだけ身近な公共団体が実施して住民の要望にそったキメ細かい対応をはかるのが適当であるから、市町村の実施可能な役務は原則として市町村の責任で行うべきものと考えます(2条3項)。シャウプ勧告にいう市町村優先の原則は、事務配分の基本原則として現在でもなお尊重されねばならないと言えます。

5 市町村優先の原則のもとでは、都道府県は、市町村行政を最大限尊重し、その間の連絡調整、その補足ないし助成を主要な使命とすべきです。具体的にいえば、おそらく、(1)全県の区域で統一的水準を保って実施すべき規制ないし役務の展開、ないしその基準の設定にかかわる事務(たとえば、警察、義務教育、社会福祉、公衆衛生にかかる規制ないし役務など)、(2)主要な市町村では実施されているが、小規模な市町村では実施することの困難な事務の補足的執行(都市計画その他建築規制、公害防止・環境保全対策、水道事業など)、(3)複数の市町村にまたがる広域的な公共事業(道路、河川、港湾、産業廃棄物の処理、土地改良事業など)、(4)市町村の能力では実施がむずかしい大規模な公共施設の設置・管理(医療、教育、文化、スポーツ、福祉施設等の維持)、(5)広域的な地域計画の企画立案、市町村間の行政事務の連絡調整、較差是正、技術的援助、争議の裁定、などが、広域団体である都道府県の実施すべき主要な任務になると解されます(2条5項、6項)。

6 現行地方自治法のもとでは、都道府県は市町村行政の補助者ないし調整者として、市町村が自主的に実施している事務についてはできるだけその権限を尊重すべき地位にあります。しかし、現実の行政においては、都道府県が主で、市町村を従とする見方が、なお一般的には根強く存在していると言えます。

 たとえば、規制行政の中から公害防止条例をとりあげてみると、これまでの県の公害防止条例の多くは、県の公害防止条例をもって地域内の公害行政の基本とし、「市町村が当該地域の自然的社会的条件に応じて必要があると認めるときは、この条例で定める事項以外の事項について、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない」といった規定を設けていることが多い。市町村の公害防止条例では、県条例を補足する定めができるにすぎないとの見方をとっていることになります。こうした規定のもとでは、市町村条例は、県条例の枠内にとどまらねばならず、市町村条例でいわゆる上乗せ規制をすることなどには、消極的な姿勢が認められます。

 しかし、市町村優先の原則を基本にして考えるならば、市町村条例を県条例に従属させる、こうした姿勢は、適切ではありません。むしろ市町村の公害防止条例に公害行政の第一次的な法源性を認め、県条例は、主として広域公害への対処と、県内一律の最低限の規制基準を補足的に定めるにとどめるのが、市町村自治優先の視点からみて妥当な態度であると解されます。

7 以上に述べたように、市町村優先の原則は、都道府県行政の補足性の原則を導くものですが、このことはむろん市町村の実施する行政には、県は一切立ち入る権限も責任もないということを意味するものではありません。市町村の事務であっても、その行財政上の能力不足などのために、実施が困難となっているものについては、県がこれを助成して適切な実施を図るべきは当然です。県行政の補足性の原則は、市町村行政に関する県の免責の根拠となるものではありません(例えば、一般廃棄物の処理は市町村の責務(廃棄物処理法6条)であるが、都道府県も、広域的視点から、その最終処分地の確保などに努め、市町村を助成する責務(同4条2項参照)があります。

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