私の気になる人・もてなす漂流作家・内田康夫

1934年、東京都北区生まれ、現在は長野県軽井沢に在住。
 コピーライター、CM制作会社社長をへて、83年から作家専業になる。80年に長編第1作「死者の木霊」(自費出版)で衝撃デビュー。
画像
 この作品が朝日新聞読書欄で紹介されたのを契機に「本因坊殺人事件」「萩原朔太郎の亡霊」などで脚光を浴びる。
 1982年に「後鳥羽伝説殺人事件」で初登場した名探偵・浅見光彦は、その後、最も人気の高いシリーズ・キャラクターの一人となる。


著者コメント
 〔浅見光彦倶楽部会員(約一万人)が選ぶ内田康夫作品ベスト33〕が同倶楽部の会報「浅見ジャーナル・36号」に掲載された。上位5作を挙げると『天河伝説殺人事件』『後鳥羽伝説殺人事件』『平家伝説殺人事件』『死者の木霊』『明日香の皇子』の順である。特筆すべきは4位と5位が浅見光彦シリーズではない点だ。『死者の木霊』はデビュー作だから別格として、『明日香の皇子』に熱烈な支持者がいることには驚かされる。『明日香の皇子』を読んだのがきっかけで内田作品を読むようになったという手紙もずいぶん多い。それも並のファンレターでなく、「感動した」という内容の熱烈なものである。いったいこの作品のどこに魅力があるのだろうか。

 『明日香の皇子』は僕の第15作目の作品である。『倉敷殺人事件』『多摩湖畔殺人事件』『津和野殺人事件』『パソコン探偵の名推理』『佐渡伝説殺人事件』『「横山大観」殺人事件』『白鳥殺人事件』などが前後に刊行されている。小説書きが面白くて(いまでもそうだが)たまらなかった初期の作品の中でも、かなり異質なものといっていい。謎解きの要素は一応、本格の形を成してはいるが、それよりも「明日香の皇子」という発想がユニークだった。推理とロマンが渾然一体となった――などという惹句が似合いそうだ。主人公の村久紘道のキャラクターが、浅見光彦や岡部和雄警部とはひと味違う、天衣無縫なところがあって、英雄の到来を予感させた。大津皇子の悲劇や明日香地方に舞台を借りたのも、地理的な旅とともに歴史・時空間を旅する楽しさを生んでいる。僕は常に「読後感」を大切にする作風を心掛けているけれど、読みおえてこれほど小気味のいい作品は、そう滅多にないだろう。

 『明日香の皇子』は「祖国愛」について語った作品かもしれない。ごくふつうのダメなサラリーマンだった村久が殺人事件や誘拐事件など、奇妙な出来事に巻き込まれ、知らず知らずのうちに渦中の中心人物であることを自覚してゆく。単に事件を解決するというだけでなく、堕落しきったこの国の真のあるべき姿への回帰へと結ぶ壮大な物語だ。そこに在るのは国を愛し人を愛す主人公たちの思いで、その系譜は後の『江田島殺人事件』や『はちまん』『氷雪の殺人』『中央構造帯』などを彷彿させる。               

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック