考察 立入検査の限界とデータ改ざんを見逃さない検査方法

 立入検査の限界とデータ改ざんを見逃さない検査方法
1 立入検査の注意事項
1.1 立入検査の位置づけ
行政機関が、処分その他の権限を適正に行使するために必要な行為
行政調査・・・質問、立ち入り、検査(立入検査、査察)
(1)当該領域の目的達成のために重要な調査
大気汚染防止法26条、消防法4条、食品衛生法17条等
(2) 行政処分の前提となる事実を収集する個別調査
  独占禁止法46条、生活保護法28・29条等
(3) 広く一般から情報収集する調査
独占禁止法40条、統計法4条等



《 改ざんの発見は大部分すべて内部告発か会社側の申告 外から見つけるのは困難です 》


1.2 なぜ立入検査ができるのか
 人は、原則として、自由に事業活動をする権利がある(憲22,29条)。

しかし、各人の人権が衝突する場合がある(例えば、営業権と生存権)。
→ その場合、「公共の福祉(憲13条)」という概念で調整
立入検査による確認が必要

1.3 立入検査の限界
(1) 令状主義
 人の基本的人権を制約できるのは、「公共の福祉」だけである。
公害防止が目的
   しかし、無制限でやっていいのか。

行政といえども歯止めは必要。
   → 強制力をともなう場合は、裁判所の発行する令状が必要。
(公権力による侵害からの保護)

しかし、行政上、各法に規定されている行政調査の場合は不要と考える。
なぜなら、届出や許可行為によって、「公共の福祉」を侵すおそれがあることが相互に了解されていることや検査がしばしば定型的・定期的になされるから。
(2) 立入検査の許容範囲
  特徴として、
 ① 検査が行政上の目的でなされること。
 ② 刑事責任の追及ではないこと。
③ 間接強制にとどまること。
④ 検査の必要性と合理性があること。
(最大判昭和47年)

1.4 許可・届出の必要性の意味
  許可・届出とは
  許可は原則禁止、届出は事前or事後に申告

公害関係の届出は事業者の責任性が強い。

未然防止と事後的規制(救済)で対応する。
①廃棄物は、許可範囲において秩序罰として厳罰
②大気・水質は未然防止が主で、直罰規制
 ③騒音・悪臭は民事的解決要素が強い。
cf.特許

1.5 刑法的注意事項
(1) 罪刑法定主義(憲31条等)
 犯罪と刑罰をあらかじめ法律に定めておかなければ罰してはならないとする原則 ・罪刑の法定、明確性の原則、類推解釈の禁止など

(2) 公務執行妨害(刑95条)
職務を執行するに当たり、暴行又は脅迫で妨害すること。
①暴行について(判例)
ア 公務員に向けられた不法な有形力の行使であれば、必ずしも直接公務員の身体に対して加えられる必要はない(間接暴行も含まれる)。
ex.① 1回の、しかも命中しなかった投石であっても、本条の暴行たりうる(最判昭33.9.30)
② 旧専売局事務官が押収してトラックに積み込んだ煙草を、路上に捨てた行為は暴行にあたる(最判昭26.3.20)
③ 収税官吏が差し押さえて自動車に積み込んだ密造酒入りのか めを、舵で破砕して内容物を流失させた行為は暴行にあたる(最 判昭34.8.27)。
④ 覚せい剤取締法違反の現行犯逮捕の現場で、司法巡査に証拠物として差し押さえられたりアンプルを、足で踏みつけて破壊する行為は暴行にあたる(最決昭34.8.27)
⑤ 公務員に対して、所携のパンフレットを丸めて相手方の顔面に突きつけ、その先端をアゴに触れさせ、相手方の座っていた椅子の前脚を床から持ち上げては落とすことによってその身体を揺さぶり、又、相手方立ち上がりかけたのを制止するためにその手首を握った行為は暴行にあたる(最判平1.3.9)。
⑥ 執行官の命を受け、その指示に従って、被告人方の家財道具を屋外に搬出中の補助者に対し、暴行を加えて、その搬出を妨害した行為は、本条における暴行に当たる(最判昭41.3.24)

② 脅迫について(判例)
① 執行官が仮処分命令の執行のために、債権者の同道した人夫を脅迫する行為は、公務執行妨害罪に当たりうる(東京高判昭29.10.19)。
② 労働争議に際して会社の業務妨害の現行犯として検挙に向かった警察官に対して、労働者が積極的な抵抗をしないで単にスクラムを組み労働歌を高唱して気勢をあげるだけでは、本罪における暴行・脅迫があったとはいえない、とした(最大判昭26.7.18)。

(3) 住居侵入罪
刑130条・・・・人の住居への侵入

(4) 公務員職権濫用罪(刑193条)
公務員が職権を濫用して、
・義務のないことを行わせる。
・権利の行使を妨害する。

2 データ改ざん、虚偽報告を見逃さない方法
2.1 自主測定の重要性
  ばい煙排出者に自主測定の義務を課すことによって、排出基準遵守の自主的な履行の確保を図るとともに、行政がばい煙の排出に関し、大気汚染防止に係る日常の状況を確認するもの。
→ 立入検査の役割
     安全操業を確認するために、記録(書類)をチェックする。
記録は、チェックし易くなっていることが重要
2.2 データ改ざん、虚偽報告の発生事例
(1) 大気の測定に関する不適正事例
  不適正処理の内容
① 現場操作室
・ペンはずし
・チャート手書き
・手で別数値を入力
② 業務管理システム
・通常値への置換
・欠測処理
 ③ 再測定の実施
・都合の数値まで実施
   → 改ざん事件の発端は、会社側からの報告

(2) 野焼きの苦情に関する不適正事例
① 野焼きの規定
本県においては、野外焼却(焼却炉を用いない廃棄物焼却)は、廃棄物処理法及び県生活環境保全条例で原則禁止されている。
↓ ただし、
  ・公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの。
② 例外規定
 (1) 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
 (2) 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
 (3) 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
 (4) 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
 (5) たき火その他日常生活を営む上で通常行われている廃棄物の焼却であって軽微なもの
↓ そこで、
 野焼きについては、虚偽である根拠が明確にできない場合が多い。
  見逃さない姿勢が大切。
 ③ 事例1『ほかでもやっている』
他の違反事例を例に出す。 → 聞き捨てにしない。どこ。
事例2 『たき火程度である』
   野焼き目的でないと主張。 → 季節、時間帯を相手に確認。
事例3『今日は、たまたまである』
普段は野焼きしていないことを主張。 → 今後はやらないでくれ。灰を片付けたら連絡くれ。
事例4『周りに配慮している』 → 大事なこと。規定の趣旨を説明
苦情に配慮している
    → 場合により、確約書を取ることも重要(相手の故意とするため)

(3) データねつ造、改ざんの起こる理由
① 研究者のデータねつ造
・データねつ造の調査例(ジェームス=ロバーツの調査、1976年)
半数以上が身近にあると回答(都合採用74%、粉飾実験17%、完全なねつ造7%、故意の解釈の誤り2%)
・メンデルの事件の例

ねつ造の理由は、多様
② 施設管理者のデータねつ造
・施設保全(安全管理上の危機回避)

ねつ造の理由は、危機回避 

2.3 施設管理側の視点に立つチェック方法
 (1) 施設管理者の意識の改革
① 施設管理者の自主性への期待
事件の発端は、自主報告 → 日常については、施設管理者
T社報告書 ほとんど聴き取りで判明・確認 → 行為者の協力が必要

 ② 行政方針の理解
   環境保全の重要性 →環境行政を理解 →環境行政に協力
・問題がない施設でも未然防止のために、立入検査が必要

 ③ 補助的改善
   複数の人に担当させる
自動化が必要
 必ず検証されるという自覚
→ ①・②・③の意識改革は、できればよいが、
  当然ながら、困難

 (2) 施設管理者の地位向上
 「公害防止防止管理者は、異常時の対応の要として、観測された異常を工場長(公害防止統括者)に適切に報告する義務がある。不適切事案の内部調査では、社内のコミュニケーション不足が指摘されている」(環境管理ガイドライン)。
↓ しかし、
コミュニケーションが取りにくい地位にあることが問題
技術的な指導に見えて、実は人の指導である
   → 環境担当の施設管理者の地位向上(重要性再認識)を支援することが大切

(3) 管理側チェックを取り入れた具体的立入検査ステップ
-データ改ざん、虚偽報告を見逃さない方法-
ステップ1 施設管理者の点検状況を理解する。
自主管理の重要性、施設管理者の立場、

ステップ2 日常点検に必要なチェックリストを作成してもらう。
簡便 外部からも分かる  
改ざん防止には、基準値を超えた場合も組み込むこと

ステップ3 立入検査の際に、チェックリストを確認し、了解をとって同様にトレース(チェック)する。
基準値を超過しそうな場合の扱い、超過した場合にどこまで報告が行くか 数字の改ざんがないか記録(記録紙)の確認 


3 まとめ
 規制は、必要最低限

↓ ・届出か許可かの判断

必要性の判断  ・経済的なものは緩くという基準

↓ ・他に方法がない場合という基準

・改ざんを前提とした体制づくりは困難
改ざんをさせないようなチェック体制づくりが重要

参 考 条 文
【憲 法】
(職業選択の自由、営業の自由) (*営業の自由を保障)
第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
(財産権)
第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
(令状主義) (*令状なければ強制なし)
第三十五条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
【大気汚染防止法】
(報告及び検査) (*立入検査権の規定)
第二十六条  環境大臣又は都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、ばい煙発生施設を設置している者、・・(略)・・に 対し、ばい煙発生施設の状況、・・(略)・・、その他必要な事項の報告を求め、 又はその職員に、ばい煙発生施設を設置している者、・・(略)・・の工場若しく は事業場若しくは特定工事の場所に立ち入り、ばい煙発生施設、・・(略)・・に 係る建築物等その他の物件を検査させることができる。
3  第一項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
4  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(ばい煙量等の測定) (*測定義務・記録義務、自主的履行の確保)
第十六条  ばい煙排出者は、環境省令で定めるところにより、当該ばい煙発生施設に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し、その結果を記録しておかなければならな い。
(罰 則) (*虚偽報告、検査拒否の罰則)
第三十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
3  第二十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
【刑事訴訟法】
(告発) (*公務員の告発義務)
第239条1項 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
3項 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発しなけれはならない。  
【刑 法】
(公務執行妨害及び職務強要) (*職務に対する妨害)
第九十五条  公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2  公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
(器物損壊) (*告訴が必要)
第二百六十一条  他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(暴行)
第二百二十二条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
(傷害)
第二百四条  人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(住居侵入、不退去)
第百三十条  正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
(公務員職権濫用)
第百九十三条  公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。

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