消防本部における予防査察の意味

消防本部における予防査察の意味 
-火災予防の立ち入り検査-
1 現状と課題 
 1.1 査察の意味
 査察とは、消防予防に関する消防法第4条第1項または危険物予防に関する消防法第16条の5第1項に基づく立入検査によって確認、又は、判明した消防法令違反等を改善させる行為をいう。

 1.1.1 火災立入検査
  第4条第1項 消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(消防本部を置かない市町村においては、当該市町村の消防事務に従事する職員又は常勤の消防団員。第5条の3第2項を除き、以下同じ。)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入って、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。


《 救急車が足りないときは消防車で救急に向かうことも多いです 》

1.1.2 危険物立入検査
  第16条の5第1項 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱に伴う火災の防止のため必要があると認めるときは、指定数量以上の危険物を貯蔵し、若しくは取り扱つていると認められるすべての場所(以下この項において「貯蔵所等」という。)の所有者、管理者若しくは占有者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防事務に従事する職員に、貯蔵所等に立ち入り、これらの場所の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いについて検査させ、関係のある者に質問させ、若しくは試験のため必要な最少限度の数量に限り危険物若しくは危険物であることの疑いのある物を収去させることができる。

1.2 査察の現状と課題
 1.2.1 火災予防査察の現状と課題
(1)防火対象物
   消防用設備等を設置しなければならない防火対象物は消防法施行令別表第1のとおりである(2ページ)。

(2)県内防火対象物数及び火災予防査察実施状況

2 立入検査の留意事項
1 はじめに
  なぜ立入検査ができるのか。
人は、原則として、自由に事業活動をする権利がある(憲22,29)。

しかし、各人の人権が衝突する場合がある(例えば、営業権と生存権)。
→ その場合、「公共の福祉(憲13)」という概念で調整
       火災発生の防止も範疇に入る。
 
2 令状主義
  (人の基本的人権を制約できるのは、「公共の福祉」だけ)
   しかし、無制限でやっていいのか。

行政といえども歯止めは必要。
    → 強制力をともなう場合は、裁判所の発行する令状が必要。
(公権力による侵害からの保護)
条文:憲35条「1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合(現行犯逮捕)を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」

しかし、行政上、各法に規定されている行政調査の場合は不要と考える。
なぜなら、届出や許可行為によって、「公共の福祉」を侵すおそれがあることが相互に了解されていることや検査がしばしば定型的・定期的になされるから。

   特徴として、
① 検査が行政上の目的でなされること。
② 刑事責任の追及ではないこと。
③ 間接強制にとどまること。
④ 検査の必要性と合理性があること。
(最大判昭和47年)

3 刑法的注意事項
(1)罪刑法定主義(憲31等)
 犯罪と刑罰をあらかじめ法律に定めておかなければ罰してはならないという原則をいう。

(2)公務執行妨害(刑95)
職務を執行するに当たり、暴行又は脅迫で妨害すること。
ア 暴行についての判例
  公務員に向けられた不法な有形力の行使であれば、必ずしも直接公務員の身体に対して加えられる必要はない(間接暴行も含まれる)。
 例として、
① 1回の、しかも命中しなかった投石でも、本条の暴行足りうる(最判昭33.9.30)。
② 旧専売局事務官が押収してトラックに積み込んだ煙草を、路上に投げ捨てた行為は暴行に当たる(最判昭26.3.20)。
③ 覚せい剤取締法違反の現行犯逮捕で、司法巡査に証拠物として差し押さえられた覚せい剤入りアンプルを、足で踏みつけて破壊する行為は暴行に当たる(最決昭34.8.27)。
④ 公務員に対して、所携のパンフレットを丸めて相手の顔面に突きつけ、その先端を顎に触れさせ、相手方の座っていた椅子の前脚を床から持ち上げては落とすことによってその身体を揺さぶり、又、相手方が立ち上がりかけたのを阻止するためにその手首を握った行為は暴行に当たる(最判平1.3.9)。

(3)住居侵入罪
刑130・・・・人の住居への侵入
① 侵入についての判例
「侵入」とは、住居権者の意思に反する立入をいう。最判昭58.4.8
「 刑法130条前段にいう『侵入シ』とは、他人の看取する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者があらかじめ立入の目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同罪は成立する」。

(4)公務員職権濫用罪(刑193)
公務員が職権を濫用して、
・義務のないことを行わせる。
・権利の行使を妨害する。

参 考 条 文
【消防法】
(目的)
第1条
 この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害に因る被害を軽減し、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。
【憲法】
(居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由)
第22条
 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
【刑事訴訟法法】
(告発)
第239条1項
 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
3項 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発しなければならない。  
【刑法】
(公務執行妨害及び職務強要)
第95条1項
 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役又は禁錮に処する。
(住居侵入等)
第130条
 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の 懲役又は10万円以下の罰金に処する。
(公務員職権濫用)
第193条
 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮を処する。

別紙 1 
第1期予防査察科 事例研究 課題

 以下の課題から1つ選び、各課題について要点を3つ以内で述べよ。

 課題1 査察関係
(1)件名 立入検査について
課題 立入検査において注意すべき(注意している)ことはなにか。

(2)件名 違反改善
課題 違反是正率を向上するために大切なことはなにか。

課題2 予防関係
   (1)件名 防火管理体制の改善
課題 事業者の防火管理を改善するには、どうすればよいか。

(2)件名 住宅防火
課題 高齢者等の住宅防火対策の推進には、なにが必要か。

   (3)件名 火災原因調査
課題 火災原因調査における問題点はなにか。

   (4)件名 放火対策
課題 放火はどうすれば減少できるか。

課題3 危険物関係
(1)件名 危険物施設
   課題 危険物施設等の安全確保について、大切なことはなにか。

(2)件名 危険物施設
課題 科学技術及び産業経済の進展に伴う危険物管理の問題点はなにか。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック